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それでもやはり、目に入るのは、はるか下のクレーターの底だけだった。またしても、空中で宙返りしているような感覚に襲われた。が、こんどはあわてずに、足下にしっかりと目を凝らした。すると、そのとき初めて気づいたのだが……足が、ない! なんてこった! またしても悲鳴をあげた。瞬間的に頭にのぼったのは、両足を吹っ飛ばされたのにちがいない、という思いだった。ああ、くそ、僕は死にかけているのだ。「助けてくれ! だれか、たのむ!」
『透明人間の告白(上)』(H・F・セイント) pp.105
<あらすじ>
ウォール街の証券マン、ニックは、偶然巻き込まれた事故で突如“透明”になってしまった。透明になったら無限の自由が手に入ると思っているあなた、ちょっと待って下さい。透明な人生は決して楽ではありません。食事は?買物は?生活費は?でも見えても見えなくても、人は生きていかねばなりません。透明人間の苦難と哀しみの底から、不透明な現代が浮び上がってくる秀逸な作品。
評価:★★★☆☆
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